そもそも、日本と韓国ではアイドルに求めてるのが違う
約30年前、韓国のアイドルのあり方は日本に近かった。
この記事の【目 次】
だが、それから約10年後の2000年には韓国の「アイドル市場」ががらりと変わっていることに気づいた。完璧な容姿、プロの歌、プロの踊りが求められるようになったのだ。
日本におけるアイドルは、今も昔も「未成熟」を核にしている。未成熟であるゆえに「ドジ」をしながらも一生懸命な姿勢をファンが応援するという構図だ。
日本において欠点のないルックスで完璧なスタイルの「アイドル」は存在しない。それは「モデル」や「女優」など別カテゴリーのタレントに入れられてしまう。
アイドル全盛期といわれる1980年代にはアイドルとして売れるためには、歌は下手なことが必要だとすらいわれた。日本のアイドルは出来上がったものではなく、可能性を売る商売なのである。
それに対して、初期は日本的だった韓国人アイドル業界も、歌や踊りで完成度の高さを目指すようになっていた。その1つの頂点が2007年にデビューした「少女時代」だ。
この「少女時代」の完成された歌唱力と見事なまでの寸分違う体の動き、見事としか言いよがない。
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1人あたりのGDPで韓国は日本に迫りつつあるが(文在寅政権の失政で遠のきそうだが)、個人消費が大きな日本と比べると韓国は輸出依存であり、人口も日本の半分以下、国内市場は日本よりかなり小さい。それはアイドル市場においても同じだ。
日本のアイドルは国内で成功すればそれなりの収入が見込めるが、韓国は市場が小さいので成功しても高収入が得られるとも限らない。
また競争が激しく、その成功がどこまで続くかもわからない。日本を初めとする外国市場に目が向くのは当然だろう。
韓国のアイドル業界が日本のような「アイドル=未成熟の一生懸命」にとどまらず、エンターテインメント性を高めたのは、1つには外国市場に打って出る必要があったからだろう。
ただし、アメリカ的な「完成度」だけでなく、日本同様に「若さ」「可憐さ」なども求められており、日本とアメリカの両方の側面がある。
そのため、タレントを目指す韓国人は、幼い頃から専門の養成所で訓練を積むと同時に、女性アイドルや女優として広く活躍できるのは30歳までといわれていて、できるだけ早くデビューさせようとする。
日本にも同じようなシステムがあるが、韓国は貧富の差が激しく階層がいくぶん固定化されているので、「一発逆転」を狙うために、人気タレントになることは、はるかに切実な目標になりうる。日本のように「娘がアイドルになりたいのだから、好きな道を行かせる」といった感じは薄く、中には「一家を挙げて、この子に懸ける」といった悲壮さを伴うことも珍しくない。
また、芸能プロ側も、オーディションで人材を集めたら、お金をかけて徹底的に鍛え上げる。芸能プロにとってアイドルは投資対象であって、デビューさせることは投資の回収でしかない。それだけに、いったん所属すれば契約でがちがちに拘束してほかに逃げないようにし、できるだけ大きな市場で活躍してもらわなければならない。
韓国の場合、「アイドル」とはいっても、パフォーマンスにおいて日本よりはるかに高いレベルを目指すので、それだけコストも本人への負担も大きなものになる。
こういった韓国の社会事情が、韓国人アイドルの自殺が多発することに影響していることは間違いないだろう。そして、自殺への直接の引き金になりやすいのが、ネットの中傷でる。
掲示板やSNSに書き込まれる中傷コメントは「悪プル」と呼ばれている。「悪」とReplay(返信)を足したネット用語だ。悪プルをよく書き込む者は「悪プラー」と呼ばれている。
政治家や人気タレントなどが心ない中傷コメントに悩むことは世界中で起こっているが、韓国の場合、どんな人気タレントにも中傷コメントを執拗に書き込み、精神的に追い詰めてやろうとする「悪プラー」がかなりいて、場合によってはサーバー管理側が削除しきれないほど集中することもある。
その背景には、韓国が儒教の影響を受ける厳しい年功社会であり、常に倫理的な監視がつきまとっていることがあるのではないか。日常の重圧からくるストレスのはけ口を、人気タレントに向けているわけである。だから、タレント側も倫理的に隙があると集中攻撃を受け、びくびくして過ごす羽目に陥る。「整形」や「枕営業」などと、あることないことを言われるのは日常茶飯事である。
自死したソルリも、一度、ノーブラであることがわかる画像をSNSに上げたことで、あとあとまで罵詈雑言を受け続けていた。特に、ソルリの自死は彼女がそういった韓国社会に反抗しようとして、奔放さを表に出したことへの反発が大きかったのだろう。
韓国では人気タレントには高い倫理観が求められる。いや、「人気タレントは高い倫理観がなければならない」というルールを口実に、罵詈雑言を浴びせようとすると言ったほうが実態に近いかもしれない。
職業:アイドルグループ「KARA」のメンバー
没年月日:2019年11月24日
享年:28歳
2019年5月26日未明、韓国・ソウル市内の自宅で自殺未遂をするも、一命を取り留めました。6月からは、日本の芸能事務所プロダクション尾木に所属して、日本で活動をしていました。
日本で順調に活動をしていましたが、韓国に帰国後の2019年11月24日、ソウル市内の自宅で遺体が見つかっており、警察は自殺とみています。
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